MEDICAL INFO
ADJUSTMENT DISORDER
適応障害とは、生活の中で強いストレスに遭遇したときに、そのストレスに心や体がうまく対応できず、つらさが強く出てしまう状態のことをいいます。たとえば、進学や転職、異動、引っ越し、身近な人との別れなど、誰にとっても大きな出来事がきっかけで起こることがあります。ストレスを自覚しやすい現代社会において、生じやすい病です。
人は誰でも環境の変化にストレスを感じます。しかし、普通は時間がたつにつれて慣れていくものです。けれども適応障害では、この「慣れていく力」がうまく働かず、気持ちが落ち込んだり、不安が強くなったりして、日常生活に支障が出てしまいます。
適応障害の大きな特徴は、自覚があるかは別として、「ストレスが原因であること」です。つまり、何かきっかけとなる出来事がはっきり存在するのです。例えば「部活動での人間関係のトラブル」「職場での上司との関係」「家庭内の変化」など、状況が具体的に関係しています。
適応障害の症状は、うつ病や不安障害とよく似ています。落ち込みが強かったり、眠れなかったりする点は共通しています。しかし、うつ病は原因がはっきりしないことも多く、長く続く傾向があります。一方で適応障害は「ストレスの原因がわかりやすい」「その原因から離れると症状が軽くなる」ことが特徴です。
適応障害は「ストレス」と深く関係しています。ストレスの種類は人によってさまざまですが、よく見られるものには次のようなものがあります。
同じ出来事に出会っても「平気だ」と思える人もいれば「とてもつらい」と感じる人もいます。これは、その人の価値観や考え方のクセ、また心の状態によって出来事のとらえ方が違うからです。
適応障害では、次のような心の症状があらわれることがあります。
心のつらさは、行動や体にも影響を及ぼします。
適応障害の診断は、まず、医師が丁寧に話を聞くことで行います。生活環境やストレスの内容、症状の経過を中心に聞き取ります。血液検査で、ストレスホルモンを測定することもあります。からだの症状もあるときは、からだの病気が隠れていないか血液検査やレントゲン検査、心電図検査などを行うことがあります。
適応障害と似た症状を示す病気に「正常な悲嘆反応」や「うつ病」、「不安障害」などがあります。医師はそれらとの違いを見極め、最も適した診断と支援を考えます。
学校での配慮や職場での業務調整、家庭での協力など、周囲の環境を整えることはとても重要です。「少し休む」「負担を減らす」ことで心身の回復を早めることができます。
心理療法は、気持ちの整理をサポートし、ストレスとの付き合い方を一緒に考える方法です。代表的なものに「支持的精神療法」があります。また、「認知行動療法」では、「考え方のクセ」を見直して、より楽な考え方に変えていく練習をします。
不安や不眠が強い場合には、必要に応じて薬が使われることもあります。ただし、薬だけで解決するものではなく、心理療法や環境の調整と組み合わせていくことが大切です。
毎日の生活の中でできる工夫も、回復の助けになります。
「一人で抱え込まないこと」が何よりも大切です。家族や友人に気持ちを話すだけでも、心が軽くなることがあります。また、早めに医療機関に相談することで、安心して対応策を考えることができます。
一度適応障害を経験すると、「またなるのでは」と不安になる方もいます。再発を防ぐためには次のような工夫が役立ちます。
適応障害は誰にでも起こる可能性があります。「心が弱いから」ではありません。周囲の理解が広がることで、本人も安心して過ごせるようになります。学校や職場、地域全体で支え合うことが大切です。
適応障害は、生活の中の強いストレスによって心や体が対応しきれなくなったときに起こる病気です。こころの不調や体の不調などが出て、学校や仕事、家庭生活に影響します。自然に回復することも多いですが、ストレスを我慢しすぎて慢性化すると症状が長引くこともあります。
大切なのは「一人でがんばりすぎないこと」。家族や友人、そして専門医療機関に相談することで、安心して生活を取り戻すことができます。当院でも、患者さまやご家族が安心して相談できる環境を整えておりますので、お気軽にご相談ください。
文責 院長 和佐野研二郎