MEDICAL INFO
ASD
自閉スペクトラム症(ASD:Autism Spectrum Disorder)は、神経発達症のひとつです。「神経発達症」とは、生まれつきの脳の働き方の特徴が原因で、学び方や感じ方、人との関わり方に特性がある状態を指します。
以前は「自閉症」や「アスペルガー症候群」と呼ばれていましたが、現在ではまとめて「自閉スペクトラム症」と呼ばれるようになりました。
「スペクトラム」という言葉には、「連続体」という意味があります。つまり、軽い困りごとから生活に大きな支障がある場合まで、さまざまな状態が連なっているという考え方です。ASDの人の中には、強い困りごとを抱える人もいれば、得意分野で大きな力を発揮する人もいます。特性は一人ひとり違い、それぞれの個性があります。
ASDの人には、大きく分けて「コミュニケーションの特性」「行動や興味、こだわりの特性」「感覚の特性」があります。ただし、これらの現れ方は人によって異なります。
ASDの方の多くは、言葉での説明より、文字や絵での説明の方が伝わりやすい傾向があります。
ASDの原因はまだ不明なことが多いですが、研究では「脳の働きの特徴」や「遺伝的な要因」が関係していることが分かっています。重要なのは、育て方や親の関わり方が原因ではないということです。この点は多くの人が誤解しやすい部分ですが、誤解をなくすことが大切です。ただ、周囲の対応によって、二次的にこころの不調をきたすことがあることも知っておく必要があります。
ASDそのものを完全に「治す」薬や方法はありませんが、困りごとを和らげ、生活をしやすくするための支援はたくさんあります。
自宅や学校、職場での環境を過ごしやすい様に工夫することで支援します。
環境の工夫や心理的支援を行っても、不眠や不安が強い場合は、必要に応じて薬が使われることもあります。
自閉スペクトラム症(ASD)は、コミュニケーションや行動・興味に特性があり、過ごしづらいこともある一方で、強みや素晴らしい個性をもっています。
診断や支援を受けることで、自分の特性を理解し、生活の中で工夫を見つけやすくなります。また、家族や社会の理解があれば、その人らしい力を活かして過ごすことができます。
当院では、ASDを持つ方やご家族が安心して暮らせるよう、各機関とも連携し、多職種でサポートする体制をとっております。困ったときは一人で抱え込まず、気軽に御相談ください。
文責 院長 和佐野研二郎