診療内容

MEDICAL INFO

認知症について

DEMENTIA

認知症とは

認知症の基本的な理解

認知症とは、脳の働きが少しずつ弱まる病気です。
「もの忘れが多くなる」というイメージが強いですが、ただ年をとったことによる物忘れとは違います。認知症は病気ですので、適切な診断や治療、支援が必要になります。
たとえば、普通の物忘れでは「夕ごはんに何を食べたか思い出せない」ことがありますが、認知症では「ごはんを食べたこと自体を忘れてしまう」ようになります。これが生活全体に支障をきたすのです。 

日本における認知症の現状

日本では高齢化が進み、認知症の患者さんは増え続けています。厚生労働省の調査によると、2030年には、65歳以上の14%にあたる7人に1人が認知症になると想定されています。
一方で、日本全体の人口は減少傾向にあり、介護人材の不足が進むため、家族が、仕事と介護の両立を迫られるケースが増えると予想されます。このため、国や地域、企業が手を取り合って研究や施策が進められ、医療と介護が連携しながら支援体制を整えています。 

認知症の種類

代表的な4つの認知症

認知症にはいくつか種類があります。代表的なものを4つ紹介します。

  1. アルツハイマー型認知症
    最も多いタイプです。記憶が少しずつ失われていくことが特徴です。ご本人は物忘れを自覚しにくいことが多いです。
  2. 脳血管性認知症
    脳梗塞や脳出血など「脳の血管」に関わる病気が原因です。症状は段階的に進むことが多いです。
  3. レビー小体型認知症
    物忘れの他に、「幻が見える」こと(幻視)や、体の動きが硬くなったりぎこちなくなったりすることが特徴です。このため、転びやすくなることもあります。
  4. 前頭側頭型認知症
    性格や行動の変化が強く出るタイプで、急に怒りっぽくなったり、こだわりが強くなったり、ルールを守れなくなることがあります。
若年性認知症について

65歳未満で発症する「若年性認知症」もあります。働き盛りでの発症は、ご本人や家族に大きな影響を与えます。仕事や子育てなど生活全般にかかわるため、早めの診断とサポートが特に大切です。

認知症の症状と行動の変化

初期症状

初期の認知症では「少しおかしいな?」と感じる小さな変化があります。

  • 同じことを何度も聞く
  • 財布や鍵をよく失くす
  • 言葉がなかなか出てこない  など 

これらは単なる物忘れと区別がつきにくいですが、生活に支障が出てきたら注意が必要です。

進行に伴う症状

症状が進むと、行動や感情の変化が目立ちます。

  • 突然怒りっぽくなる
  • 急に泣いてしまう
  • 逆に無関心や無気力になる
  • 夜に落ち着かなくなる(徘徊)
  • 料理が出来なくなる  など 

日常生活が難しくなり、介護や支援が必要になってきます。

認知症の原因と診断

主な原因

認知症は「脳の神経細胞が傷つけられていく」ことで起こります。生活習慣病(高血圧・糖尿病など)や運動不足、睡眠不足なども関係するといわれています。

診断の流れ

認知症が疑われたときには、以下のような診断が行われます。

  • 問診:医師が生活の様子や変化、持病などを尋ねる(ご家族からの聞き取りも大切です)。
  • 心理検査:症状に合ったテストで、記憶や判断力をチェックする
  • 画像検査(MRI・CTなど):脳の状態を画像で確認する
  • 血液検査:他の病気が関係していないかを確認する 

早く診断を受けることで、ご本人とご家族が将来の生活に備えることができます。また、年相応の物忘れや体の病気などによる一時的な物忘れを見分けることが大切です。 ※当院では、MRIやCTの検査は行っておらず、連携する他病院に紹介しての検査となります。

認知症の治療とサポート

薬物治療

認知症を完全に治す薬はまだありませんが、進行を遅らせたり、症状をやわらげたりする薬はあります。

非薬物療法
  • 運動療法:からだの動きを良くするとともに脳を活性化します
  • 音楽療法: 気持ちを落ち着かせたり、体や頭を活性化したりします。
  • 回想法:気持ちを落ち着かせて、自信を回復します 

生活習慣やリハビリも大切です。

  • 運動や体操
  • 会話や趣味活動
  • 音楽や絵を楽しむ 

さらに、認知症デイケアデイサービスを利用すると、本人が安心して過ごせるだけでなく、家族の介護負担も軽減できます。

介護と支援の体制

家族の役割と支え方

認知症の介護では、「できることを大切にし、できない部分をさりげなく支える」ことが基本です。本人の尊厳を守るためにも、無理に何かをさせるのではなく、安心できる環境を整えることが大切です。
家族だけで抱え込むと疲れてしまうことがあります。そのため、相談できる人や支援を積極的に利用することが重要です。

地域や制度の支援

介護保険や医療保険が使えます。地域包括支援センターやかかりつけ医、訪問看護やケアマネジャー、などがサポートしてくれます。地域の相談窓口に早めに相談することで、負担を軽くし、安心できる生活が続けられます。

認知症の予防とこれから

予防に役立つ生活習慣

認知症を完全に防ぐ方法はありませんが、研究から「予防に役立つ生活習慣」がわかってきています。

  • バランスのよい食事
  • 禁煙や節酒
  • 毎日の運動(散歩や体操)
  • 人との会話や地域活動(ボランティアなど)
  • 趣味や学びの継続 

これらは「脳を元気に保つ」だけでなく、心の健康にもつながります。

まとめ

認知症は、誰にでも起こりうる身近な病です。しかし、早くきづいて治療や支援を受ければ、本人も家族も安心して生活することができます。当院では医師や看護師、作業療法士、ソーシャルワーカーなどが協力し、支えていきます。また、当院では、医療保険で利用できる認知症デイケアを行っており、運動療法・回想法・音楽療法など、お一人お一人に合ったプログラムを作成し活動の中で治療を行っています。そして、ご自宅で生活しながら、ご本人の症状と生活の改善、ご家族の介護負担や経済的負担を軽くすることを目指しています。もし気になることがあれば、どうぞ遠慮なくご相談ください。

参考資料

  • 厚生労働省:認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)
  • 厚生労働省:認知症施策について
  • 国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
    https://www.ncgg.go.jp/
  • 公益社団法人 認知症の人と家族の会
    https://www.alzheimer.or.jp/
  • 世界保健機関(WHO):Dementia

文責 院長 和佐野研二郎