MEDICAL INFO
DEPRESSION
うつ病は「こころの病気」のひとつです。長いあいだ気分が落ち込み、やる気が出ない状態が続きます。
ふつうの疲れや一時的な落ち込みとはちがって、日常生活や仕事、学校生活に大きな影響を与えるのが特徴です。うつ病は特別な人だけがなる病気ではなく、誰でもかかる可能性があります。日本での調査で、生涯でうつ病にかかる割合は5.7%と報告されており、現代のストレス社会でその割合は増加傾向にあります。これは「心が弱いから」ではなく、医学的に治療が必要な病気です。
うつ病にはいくつかのタイプがあります。
それぞれ特徴がちがうため、医師の正しい判断と対応が必要です。
うつ病では「抑うつ気分」(深い落ち込み)や「喜びを感じられない」ことが中心的な症状です。好きなことをしても楽しめず、将来に希望を持てなくなることがあります。集中力が下がり、勉強や仕事が手につかなくなる人もいます。不安やイライラが強まることもあります。症状がとても重くなると、現実ではない「ひどく貧しくなってしまった」「大病になってしまった」「罪を犯してしまった」などと思い込んでしまうことや、「死んだ方が楽」との考えに至ってしまうこともあります。
心だけでなく、体にも変化が出ます。眠れない、朝早く目がさめてしまう、逆に寝すぎるといった「睡眠障害」がよくみられます。食欲がなくなる、逆に食べすぎる、体重が変化する、疲れやすい、疲れがとれない、頭痛や肩こり、便秘やのどの渇きなどが続くこともあります。
これらの症状が続くと、生活に大きな影響が出ます。「学校に行けない」「仕事に行けない」「家事ができない」といった困難が生じます。その結果、自信をなくしたり、責任や孤独を感じたりして、さらに悪循環に入ることもあります。
うつ病の原因は一つではなく、いくつかの要素が重なって起こります。
脳の中で気分を調整する「セロトニン」「ノルアドレナリン」といった物質の働きが弱まると、落ち込みやすくなることが知られています。また、体の病気やホルモンの変化、遺伝の影響も関係することがあります。
強いストレスや人間関係の悩み、失敗や大切な人を失うなどの悲しい出来事が発症のきっかけになることがあります。逆に、成功や昇進、合格、結婚などのうれしい出来事が発症のきっかけになることもありえます。まじめで責任感が強い人は、ストレスをため込みやすいため注意が必要です。
実際には、脳の働きの変化と生活のストレスが重なってうつ病が起こると考えられています。そのため治療も「薬」「心理療法」「生活環境の工夫」を合わせて行うことが大切です。
うつ病の原因は一つではなく、いくつかの要素が重なって起こります。
診断は、医師との面接(問診)で行います。どのような症状がどのくらい続いているか、どのような影響が出ているかなどを丁寧に確認します。国際的な診断基準(DSMやICD)を参考にして判断します。
必要に応じて、血液検査や画像検査を行うこともあります。これは、甲状腺ホルモンの病気など体の病気が原因で同じような症状が出ていないかを調べるためです。
うつ病の治療は、一人ひとりの症状や環境に合わせて行います。
面接で、こころの整理をすることも有効です。
これらは医師や心理士などと一緒に取り組みます。
必要かどうかをよく判断し、必要な場合は、「抗うつ薬」などの薬を使うことがあります。脳の働きを整え、気分の落ち込みを改善する効果が期待されます。効果が出るまで数週間かかることもあるほか、副作用が出ることもありますが、調整で副作用に対処できることが多いため、医師と相談しながら根気よく続けることが大切です。
薬が効きにくい重い症状には、「修正型電気けいれん療法(mECT)」や「反復経頭蓋磁気刺激療法(rTMS)」といった専門的な治療が提案される場合もあります。いずれも安全に配慮して行われます。※これらの治療は当院で行っていないため他院への紹介を要します。
自宅での生活が難しい場合や、食事が全く食べられないなど症状が重く緊急性の高い場合は入院治療が必要なこともあります。安心できる環境で見守りの中、手厚い治療を受けられることがメリットです。
うつ病の回復には休養が欠かせません。無理をせず、睡眠や生活リズムを整えることが大切です。また、家族や職場・学校の理解とサポートが回復の助けとなるため、必要性と希望に応じて治療者が連携をとります。
軽い運動は気分を改善し、体を健康に保つことが報告されています。散歩やストレッチなど、できる範囲で続けましょう。食事は栄養バランスが大事で、魚や野菜、ビタミンB群を含む食材がこころの健康にも良いとされています。
回復の途中で学校や仕事に戻るときは、主治医や周囲の人と相談しながら、少しずつ進めていくのが望ましいです。リワークプログラムや学校での支援制度を活用できることもあります。
うつ病は再発しやすい病気です。症状が完全によくなってからも4~9か月間は、特に再発する可能性が高いとされています。症状がよくなっても、薬を自己判断でやめないこと、定期的に通院し薬の減量・中止は医師によく相談しながらすすめることが大切です。早めに対応すれば、症状が重くなるのを防ぎやすくなります。
回復には時間がかかることがありますが、多くの人が治療を続けることで元の生活に戻っています。焦らず一歩ずつ進むことが大切です。社会復帰をサポートする制度や医療機関や福祉機関の支援もありますので、一人で抱え込まないようにしましょう。
うつ病は誰にでも起こり得る病気です。早く気づき、専門の医療機関で治療を受けることで多くは回復につながります。症状に心当たりがあるときは、治療の必要があるかの判断もふくめて、一人で悩まずに精神科や心療内科に相談してください。当院では、医師、看護師、精神保健福祉士、作業療法士、心理士など様々な職種が連携し、患者さんとご家族に寄り添いながら、安心して治療を受けていただけるよう努めておりますので、心おきなくご相談ください。
文責 院長 和佐野研二郎