MEDICAL INFO
OBSESSIVE-COMPULSIVE DISORDER
強迫性障害(OCD)は、こころの病のひとつです。特徴は「頭に浮かんできてしまう不安な考え(強迫観念)」と「その不安を減らすためにくり返してしまう行動(強迫行為)」です。
たとえば、
といった行動です。
本人は「やりすぎだ」と頭では分かっていても、不安に耐えられず、行動を止められないことが多いのです。その結果、生活に時間がかかりすぎたり、疲れてしまったり、人間関係に影響が出てしまうことがあります。
強迫性障害は珍しい病気ではなく、生涯有病率は1~2%程度です。20歳前後で発症することが多いですが、子どもから大人まで幅広い年齢で起こり得ます。「こころの弱さ」や「意思の弱さ」が原因ではありません。れっきとした病であり、治療によって改善が期待できます。
強迫観念とは、頭に浮かんできてしまい、どうしても消えない考えやイメージのことです。代表的なものに次のようなものがあります。
不安を少しでも減らそうと、ある行動を何度もくり返してしまいます。
強迫行為は一時的に安心をもたらしますが、すぐにまた不安が出てきてしまい、再び同じ行動をくり返すことになります。この悪循環が、日常生活に大きな影響を与えます。
原因はひとつではなく、いくつかの要因が重なって起こると考えられています。
脳の中で「セロトニン」という神経伝達物質の働きが関係しているといわれています。この物質のバランスが乱れることで、不安やこだわりが強まりやすくなると考えられています。
強いストレスや環境の変化(入学、進級、就職など)がきっかけになることがあります。また、几帳面で責任感が強い性格の人は、強迫性障害の症状が出やすい傾向があるといわれています。
家族の関わり方も影響します。たとえば、強迫行為に付き合いすぎることで症状が悪化したり、逆に「やめなさい」と強く叱ることで不安が増えたりすることもあります。逆に、家族に強迫行為を代行してもらうなど、周囲を巻き込んでしまうこともあります。
診断は、精神科や心療内科の医師による問診から始まります。どのような考えが浮かぶのか、どんな行動をくり返しているのか、生活への影響はどのくらいかを丁寧に聞き取ります。
うつ病や統合失調症、自閉スペクトラム症など、似た症状を持つこともある病気との違いを確認することも大切です。併存していることもあります。そのため、診断には時間をかけて慎重に進めます。
治療にはいくつかの方法があります。多くの場合、薬と心理的な治療(精神療法)を組み合わせて行います。
症状が重く、通常の治療で改善が難しい場合、修正型電気痙攣療法(m-ECT) などが選ばれることもあります。どちらも専門の医療機関で、医師が適切に判断して行います。 ※当院では、m-ECTは行っておらず、検討する場合は、連携する医療機関への紹介となります。
強迫性障害は、生活のさまざまな場面に影響します。
このように、本人だけでなく家族も疲れてしまうことがあります。
家族は、治療や回復を支える大切な存在です。
医師や看護師、心理士などの多職種が関わることで、ご本人も家族も安心して治療に取り組むことができます。
強迫性障害は「頭に浮かぶ不安」と「それを減らすためにくり返す行動」が特徴の病気です。決して珍しいものではなく、誰にでも起こり得ます。
治療には時間がかかることもありますが、薬や認知行動療法、家族の支えによって症状は改善していきます。大切なのは、「一人で悩まないこと」です。
もし「もしかしたら自分や家族が強迫性障害かもしれない」と感じたら、どうぞ早めに医療機関へ相談してください。当院でも、治療によって、安心できる生活を取り戻せるようお手伝いしています。
文責 院長 和佐野研二郎