診療内容

MEDICAL INFO

パニック症について

PANIC DISORDER

パニック症とは

パニック症という病気は、突然とても強い不安や恐怖の気持ちにおそわれる「パニック発作」が起こるのが特徴です。発作はある日いきなり起こることが多く、「心臓が止まるのではないか」「呼吸ができなくなって死んでしまうのではないか」と感じるほど強烈な体の反応や恐怖を伴います。
この発作は、数分から長くても30分ほどで落ち着くことが多いのですが、体験している本人にとっては非常に苦しく、命の危険を感じるほどです。そのため「また起こったらどうしよう」という強い不安が心に残り、生活に支障をきたすことがあります。
パニック症は、不安症のひとつに分類される病気です。日本でも多くの人が経験している病気で、決して珍しいものではありません。精神科や心療内科で相談し、適切な診断と治療を受けることで、多くの方が安心して生活できるようになっています。 

パニック症の症状

パニック発作であらわれる体と心の反応

パニック発作では、体にさまざまな症状があらわれます。

  • 心臓がドキドキして胸が苦しい
  • 呼吸が速くなり、息苦しくなる(過呼吸)
  • 手足が震えたり、冷や汗が出たりする
  • めまい、吐き気、体のふらつき
  • 寒気や熱い感じ
  • 「このまま死んでしまうのでは」「どうかなってしまうのでは」という強い恐怖感 

これらは体が危険に備えて急に緊張したときの反応と似ています。ですが、実際には命に関わる病気ではなくても、このような発作が繰り返されると、本人は大きな不安を感じてしまいます。

予期不安と広場恐怖

発作を経験すると、「また同じことが起こるのではないか」と心配するようになります。これを「予期不安」といいます。
さらに、症状が重くなると「もし発作が起きたら逃げられない」と思う場所を避けるようになり、外出や人混み、電車やバスに乗ることが難しくなることがあります。これを「広場恐怖」と呼びます。このため、学校や仕事に行けなくなるなど、日常生活に大きな制限がかかることもあります。 

パニック症の原因

パニック症の原因はひとつではなく、いくつかの要素が重なって起こると考えられています。

ストレスや生活習慣の影響

強いストレスや過労、生活リズムの乱れがきっかけになることがあります。たとえば、受験勉強や仕事、人間関係のトラブルなどで強い緊張が続くと、体と心が疲れて発作が起こりやすくなるのです。カフェインや睡眠不足も発作を増やすといわれています。

脳の働きとの関係

脳の中では「セロトニン」「ノルアドレナリン」などの神経伝達物質が気分や不安の調整に関わっています。これらの働きが一時的に乱れることで、パニック発作が出やすくなると考えられています。

遺伝の傾向

家族に同じような症状を持つ人がいる場合、発症のリスクがやや高いことがわかっています。

診断と治療方法

診断の流れ

パニック症は、心療内科や精神科で診断されます。まず医師が話を聞き、発作の起き方や頻度、生活への影響を確認します。そのうえで、必要があれば心電図検査や血液検査などを行い、心臓病や甲状腺の病気など他の病気ではないかを確かめます。飲酒や飲んでいるお薬の影響でないかも確認します。

治療の方法

治療にはいくつかの方法があり、患者さんの状態に合わせて組み合わせて行います。

  • 薬物療法
    抗不安薬や抗うつ薬を使うことがあります。これにより発作が出にくくなったり、不安が和らいだりします。
  • 心理療法
    認知行動療法などを行い、不安への考え方や反応を調整していきます。安心できる状況で少しずつ不安を乗り越える練習をすることもあります。
  • 生活習慣の改善
    睡眠をしっかりとる、食生活を整える、運動を取り入れるなど、体と心を安定させる工夫も大切です。アルコールやカフェインの取りすぎも発作を起こしやすくするため注意が必要です。 

パニック症と向き合うために

自分でできる工夫
  • 発作が起きたときは、はく息を意識した深呼吸をして呼吸を整える
  • 音楽やストレッチなど、自分が安心できる方法を持つ
  • 無理をせず、規則正しい生活を心がける 

こうした工夫は発作を完全になくすものではありませんが、不安をやわらげる助けになります。

家族や友人のサポート

周囲の理解はとても大切です。「気持ちの問題」と片付けてしまうのではなく、病気として正しく理解し、安心できる環境を作ることが患者さんの回復を支えます。家族や友人が「一緒にいよう」「大丈夫だよ」と声をかけてくれるだけでも安心感につながります。

まとめ

パニック症は、「気持ちの強い、弱い」などは関係なく、どなたにもおこりうる病です。突然の発作や強い不安に悩まされると、学校や仕事、家庭生活に大きな影響が出ることがあります。
しかし、適切な診断と治療を受けることで、多くの方が日常生活を取り戻しています。大切なのは「一人で抱え込まず、早めに相談すること」です。
当院では、患者さんとご家族に寄り添い、安心して治療に取り組めるように多職種でサポートしています。パニック症でお困りの方、またご家族が心配されている方は、どうぞお気軽にご相談ください。 

参考資料

  • 厚生労働省 e-ヘルスネット「パニック障害」
  • 国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所「不安障害について」
  • 日本うつ病学会「パニック障害」
  • MSDマニュアル家庭版「パニック障害」 

文責 院長 和佐野研二郎