MEDICAL INFO
PANIC DISORDER
パニック症という病気は、突然とても強い不安や恐怖の気持ちにおそわれる「パニック発作」が起こるのが特徴です。発作はある日いきなり起こることが多く、「心臓が止まるのではないか」「呼吸ができなくなって死んでしまうのではないか」と感じるほど強烈な体の反応や恐怖を伴います。
この発作は、数分から長くても30分ほどで落ち着くことが多いのですが、体験している本人にとっては非常に苦しく、命の危険を感じるほどです。そのため「また起こったらどうしよう」という強い不安が心に残り、生活に支障をきたすことがあります。
パニック症は、不安症のひとつに分類される病気です。日本でも多くの人が経験している病気で、決して珍しいものではありません。精神科や心療内科で相談し、適切な診断と治療を受けることで、多くの方が安心して生活できるようになっています。
パニック発作では、体にさまざまな症状があらわれます。
これらは体が危険に備えて急に緊張したときの反応と似ています。ですが、実際には命に関わる病気ではなくても、このような発作が繰り返されると、本人は大きな不安を感じてしまいます。
発作を経験すると、「また同じことが起こるのではないか」と心配するようになります。これを「予期不安」といいます。
さらに、症状が重くなると「もし発作が起きたら逃げられない」と思う場所を避けるようになり、外出や人混み、電車やバスに乗ることが難しくなることがあります。これを「広場恐怖」と呼びます。このため、学校や仕事に行けなくなるなど、日常生活に大きな制限がかかることもあります。
パニック症の原因はひとつではなく、いくつかの要素が重なって起こると考えられています。
強いストレスや過労、生活リズムの乱れがきっかけになることがあります。たとえば、受験勉強や仕事、人間関係のトラブルなどで強い緊張が続くと、体と心が疲れて発作が起こりやすくなるのです。カフェインや睡眠不足も発作を増やすといわれています。
脳の中では「セロトニン」「ノルアドレナリン」などの神経伝達物質が気分や不安の調整に関わっています。これらの働きが一時的に乱れることで、パニック発作が出やすくなると考えられています。
家族に同じような症状を持つ人がいる場合、発症のリスクがやや高いことがわかっています。
パニック症は、心療内科や精神科で診断されます。まず医師が話を聞き、発作の起き方や頻度、生活への影響を確認します。そのうえで、必要があれば心電図検査や血液検査などを行い、心臓病や甲状腺の病気など他の病気ではないかを確かめます。飲酒や飲んでいるお薬の影響でないかも確認します。
治療にはいくつかの方法があり、患者さんの状態に合わせて組み合わせて行います。
こうした工夫は発作を完全になくすものではありませんが、不安をやわらげる助けになります。
周囲の理解はとても大切です。「気持ちの問題」と片付けてしまうのではなく、病気として正しく理解し、安心できる環境を作ることが患者さんの回復を支えます。家族や友人が「一緒にいよう」「大丈夫だよ」と声をかけてくれるだけでも安心感につながります。
パニック症は、「気持ちの強い、弱い」などは関係なく、どなたにもおこりうる病です。突然の発作や強い不安に悩まされると、学校や仕事、家庭生活に大きな影響が出ることがあります。
しかし、適切な診断と治療を受けることで、多くの方が日常生活を取り戻しています。大切なのは「一人で抱え込まず、早めに相談すること」です。
当院では、患者さんとご家族に寄り添い、安心して治療に取り組めるように多職種でサポートしています。パニック症でお困りの方、またご家族が心配されている方は、どうぞお気軽にご相談ください。
文責 院長 和佐野研二郎