MEDICAL INFO
SCHIZOPHRENIA
統合失調症は、こころの病気のひとつです。脳のはたらきにバランスのくずれが起こり、周りの情報に対して、過敏すぎるところと鈍くなるところが同時に現れる病気です。たとえば、実際には存在しない声が聞こえたり(幻覚)、根拠のない思い込みを強く信じてしまうこと(妄想)、やる気がなくなってひきこもってしまうことなどがあります。
100人に約1人が発症する可能性があり、決して珍しい病気ではありません。誰にでも起こりうる身近な病気のひとつなのです。世界ではたくさんの人がこの病気と向き合っており、日本でも数十万人が治療を受けています。
以前は、治療が難しかった病ですが、最近は、医学の進歩により画期的な治療法も増え、早期に適した治療と支援をうければ、日常生活を続けることができる病気となってきています。
私たちは日常生活の中で、考えたり感じたりすることに「脳のはたらき」を使っています。たとえば、勉強に集中したり、友達と楽しく会話したり、将来のことを考えたりするのも「脳のはたらき」です。
統合失調症になると、この「脳のはたらき」のバランスが乱れてしまい、
といった体験をすることがあります。
これは本人にとってはとても現実的で、周囲が「そんなことないよ」と言っても簡単には変わりません。
また、これらは勉強や仕事、日常生活に大きな影響を与えるため、本人だけでなく家族も悩むことが少なくありません。
「陽性症状」とは、普段はないはずの体験が出てくる症状のことです。
これらは周りから見ると「道理が通らずありえない」「そんなはずないじゃないか」「なんでそんな事も分からないの」と感じるかもしれませんが、本人にとっては真実であり、とてもつらい体験です。
「陰性症状」とは、逆に普段あるはずの力が弱まってしまう症状です。
このような症状は「怠けている」と誤解されがちですが、病気による変化です。また、治療中の場合は薬での鎮静と区別がつきにくいことがあります。
統合失調症では「考える力」にも影響が出ることがあります。
勉強や仕事、友達関係にも影響が出やすく、本人にとっても周囲にとっても困難が増える症状です。
「なぜ統合失調症になるのか」は、まだ完全には解明されていません。ただし、次のような要因が関係していると考えられています。
つまり「もともとの体質」に「生活環境のストレス」が重なって発症すると言われています。
精神科では、医師が患者さんやご家族から話を聞き、症状の経過を確認します。他のこころの病気やからだの病気でも似たような症状がでることもあるため、それらを否定するために、必要に応じて心理検査や血液検査などを行います。診断にはDSMやICDなど国際的な基準が用いられ、医師が総合的に判断します。
自己判断では正しく診断できないため、気になる症状があるときは早めに専門医に相談することが大切です。
基本は「抗精神病薬」という薬を使った治療です。幻覚や妄想を抑え、意欲や認知機能を回復させ、再発を防ぐ効果があります。
再発を防ぐ効果があり、長期的に使われることが多い薬です。
薬だけでなく、生活を支えるためのリハビリや支援も重要です。
薬だけで改善が難しい場合や緊急性の高い場合には「修正型電気けいれん療法(mECT)」という選択肢もあります。これは全身麻酔を使って行う、安全に配慮された治療法のため、妊婦さんなども利用されることがあります。
※「修正型電気けいれん療法(mECT)」は、当院では行っていないため、連携している他の病院に相談・紹介となります
また、ご本人やご家族への支援や病気についての教育も大切です。病気の正しい理解があると、ご本人もご家族もより安心して病気に向き合うことが出来ます。ご家族が本人に過干渉な場合は、治療にマイナスの働きとなる可能性があるともいわれています。
病院だけでなく、地域の保健・福祉サービスと協力しながら支援していきます。
統合失調症の経過は、「急性期」「回復期」「維持期」の3つの段階に分けて考えらることが多いです。
適切な治療と支援を続ければ、安定した生活を送れる方は多くいらっしゃいます。なるべく早い時期に治療を受けることが大切です。
再発を防ぐためには、次のことが大切です。
「病気と上手につきあっていく」ことが、安定した生活につながります。
統合失調症はずっと付き合っていかなければならない病ではありますが、サポートをうけつつ工夫を重ねることで、支障なく暮らすことができます。
統合失調症は「支援があれば、支障なく暮らしていける病」です。精神科デイケアや訪問看護、相談支援事業所、就労支援など、社会にはたくさんの支援の場があります。
日本では、病院や地域の専門機関とつながることで、患者さんやご家族が孤立せずに安心して生活できる環境が整っていきます。
統合失調症は長い付き合いが必要な病気ですが、治療や支援を受けながら安定して生活を送っている方は数多くいます。大切なのは「ひとりで抱え込まないこと」です。
患者さん、ご家族、医療機関、地域が力を合わせることで、よりよい生活を送ることが可能です。当院では、外来から入院、また、訪問看護や精神科デイケア、復職支援、宿泊型自立訓練施設などの退院後の支援まで、まんべんなくサポートできる体制を整えております。ご心配なことがあれば、気軽にご相談ください。
文責 院長 和佐野研二郎